仙骨骨折の治療法と期間の目安をスポーツ整形外科医が解説

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歌島 大輔

歌島 大輔

スポーツ整形外科医師(非常勤)さくら通り整形外科
スポーツ整形外科専門医師(川崎市立井田病院・景翠会 金沢病院・さくら通り整形外科 各非常勤医師)として外来診療・手術を行っている。ケガやスポーツ障害という「マイナス」から元通りという「ゼロ」を目指すのではなく、パフォーマンスに変革をもたらす「大きなプラス」を一緒に目指す情報発信やコーチング活動をライフワークとする。

今回は仙骨骨折(せんこつこっせつ)の治療法と治療期間の目安を解説していきたいと思います。

仙骨骨折は骨盤骨折(こつばんこっせつ)の一部ですが、この診断を告げられたら、ちょっと混乱しますよね。どんだけ重症なんだろう!?手術が必要なの?治るのか?などなど。

画像引用元(一部改変):運動器外傷治療学 第一版 医学書院

ひとくちに仙骨骨折と言っても、仙骨は大きな骨ですから、部位によっても重症度は違ってきて、重症度が違うと治療も治療期間も全然違ってきます。

 

ご自身やご家族・知り合いの仙骨骨折どの重症度なんだろう?というのを思い浮かべながらお読みいただくといいかもしれません。

 

こんにちは、スポーツ整形外科医の歌島です。本日も記事をご覧いただきありがとうございます。

それではいきましょう!

仙骨の基本ををおさらい

仙骨骨折の治療法について解説するにあたっては最低限、仙骨とはどこでどんな役割があって、仙骨骨折にはどんな特徴があるのか?という基本を理解する必要があります。

「そんなのは知ってるよ」という人もおさらい程度にザッと流して確認してください。

仙骨とは?どこ?

まず仙骨とは?

どこにある骨?

ということですが、一言で言えば、お尻のど真ん中の骨です。

引用元:プロメテウス解剖学アトラス解剖学総__運動器系_第2版 医学書院

この仙骨の上には背骨の腰部分である腰椎の一番下である第5腰椎が乗っかり、第5腰椎と仙骨は椎間関節(ついかんかんせつ)という関節を形成しています。

また、仙骨の左右には腸骨(ちょうこつ)といういわゆる腰骨(こしぼね)があって、仙腸関節を形成しています。

そして、下には尾側(びこつ)があります。

仙骨の主な役割は?

仙骨の主だった大切な役割をご紹介します。

骨盤の後ろの壁

まず一番は骨盤を形成している骨の1つあるということが大切です。

骨盤というのは下半身と上半身を繋ぎ、身体のコアとなる部分として運動においても重要な役割を果たしていますし、

骨盤の中には腸や膀胱、生殖器、大血管など非常に重要な臓器を詰め込んである部分でもあります。

この骨盤の真ん中後ろの壁を形成しているというポイントは外せないですね。

仙腸関節を形成する

もう一つは仙腸関節を形成するという点です。

非常に動きの少ない関節ですが、それは右脚、左脚が受けた体重(地面からの反力)を上半身に伝えるという負荷の強さゆえ、腰痛の原因になりやすい関節と考えられています。

脊髄神経の枝の出口

脳から脊髄を通って、神経は脚に向かいます。この神経経路を伝って脚を動かしたり、脚からの感覚を感知したりするわけですが、この脊髄神経が脚に向かう枝が仙骨に開いている穴から出ます。

 

この脊髄神経の仙骨から出る枝の一部は膀胱や直腸というようないわゆる排泄に関連する部分を支配しているので、そういう意味でも重要です。

仙骨骨折の特徴は?

仙骨の基本を押さえていただいたあとは、 仙骨骨折の特徴になります。

仙骨という骨の特徴を踏まえると、その骨が折れてしまったときの特徴はわかりやすいと思います。

骨盤の骨折は重症になりやすい

仙骨骨折は骨盤骨折の1つで、骨盤の壁です。 この骨盤の壁はほぼ360度前から後ろまであって、「骨盤輪(こつばんりん)」と呼ばれています。

引用元:プロメテウス解剖学アトラス解剖学総__運動器系_第2版 医学書院

この骨盤輪の破綻を起こすような骨折は、骨盤の中の臓器がやられてしまうこともあれば、大きな変形を伴うこともあり、さらに大抵、一般の人が想像する以上の大量出血があります(数リットルなんてこともザラです)。

ということで、かなり重症になりやすいということは頭に入れておく必要があります。

神経症状に注意

神経の枝の出口と述べましたので、神経が仙骨の近くに集まっているということで、骨折によって神経損傷を起こしてしまいリスクがあります。

その場合に当然、神経症状の出現が考えられます。脚のしびれや力が入らないなどの麻痺症状、また、膀胱直腸障害と言って、排尿排便に異常が出たりしますので、注意が必要です。

座るときの負担がキツい

物理的にお尻のど真ん中が仙骨ですから、座るときにダイレクトに負担がかかりやすいと言えます。

脚の骨折であれば座って車椅子に乗っていれば、あまり負荷はかかりませんが、仙骨はそうもいきません。

この負担をどうするか?というのも問題になりやすいです。 

仙骨骨折の治療法と治療期間の目安

いよいよ、仙骨骨折の治療法と治療期間の目安ということになりますが、実際の仙骨骨折は骨折部位や骨折のずれ具合によって重症度がぜんぜん違います。

そのため、いくつかの重症度や部位毎にポイントを解説してみたいと思います。

軽症型は痛みに応じた日常生活可

まず軽症型です。

これは骨折のズレが少なくて安定しているということと、 骨折部が関節(特に仙腸関節)に及んでいないということが前提です。

この場合には痛みに応じて無理のない範囲で日常生活を早めから送れます。

骨がくっつくまでは1.5–2ヶ月くらいかかるのはどの骨折でも共通ですが、安定している場合には1ヶ月くらいでだいぶ痛みはひいてくれることが多いです。

仙腸関節部分は歩行に注意が必要

骨折が仙腸関節に及んでいる場合は、その骨折が及んでいる側の脚に体重をかけるのは危険です。

骨が安定する(くっついてくる)までは松葉杖などによる免荷(足をつかない)が必要になります。そこからだんだん、リハビリ担当の療法士(理学療法士)の指導の下、かける体重を増やしていくというのが一般的です。

重症型は手術も含め集中的な入院治療が必要

重症型はいろいろなケースがありますが

  • 骨盤輪の破綻(仙骨の他にも恥骨などの骨折がありずれているなど)があり不安定
  • 骨盤の中の内臓の損傷がある
  • 骨折が大きく大量出血が予測される状態

などが代表的です。

仙腸関節の脱臼を伴った重症型の骨盤骨折 画像引用元(一部改変):運動器外傷治療学 第一版 医学書院

 

このような場合は

  • 入院安静
  • 入院して精密検査(骨折の程度、内臓の損傷や出血の程度をCTなどでチェック)
  • 貧血の有無のチェック=採血
  • 貧血や脱水に対する点滴や輸血
  • 損傷部位(骨折や内臓)に対する必要な手術

などが必要になります。

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骨盤骨折の手術は複雑な形の骨盤を元に戻して固定する必要があり、難易度も高く時間もかかる大手術になることが多いです。

画像引用元(一部改変):運動器外傷治療学 第一版 医学書院

治療期間の目安は骨がくっつくまでの期間がベース

治療の期間ですが、

まずベースは骨がくっつくまでの期間です。

これは軽症であれば受傷してから、手術した場合は手術してから1.5から2ヶ月というのが目安ですが、

当然、重症な場合はもう少し伸びます。

また、内臓損傷や大量出血があった場合にはその治療期間もありますし、また安静期間が長ければ、その後のリハビリも治療期間に加えないといけません。

そのため、重症の場合は全治3ヶ月から6ヶ月というのが幅広いですが1つの目安ではないでしょうか。

仙骨骨折を早く治すためのポイント

そんな重症度によっては相当長びく仙骨骨折を早く治すためのポイントですが、

安静度はしっかり守る

1つは当然ですが、骨折に応じて医師から指示される安静度というものを守ると言うことです。

安静度というのはいろいろあって、

  • ベッド上で足を持続的に牽引する
  • ベッド上安静
  • 車椅子まで
  • 股関節はできるだけ動かさない
  • 体重をかけてはいけない(免荷)
  • 体重を1/3だけかけていい(1/3部分荷重)
  • 体重を2/3だけかけていい(2/3部分荷重)
  • 歩行はいいが走ってはいけない

など、状態に応じて主治医から指示が入ります。

 

入院中であれば大丈夫ですが、自宅ではつい動いてしまう・・・なんてことがありがちです。

よく外来で「つい動いちゃったら痛みが強まっちゃいました・・・」なんていう人がいます。これは治療期間を延ばす1つの要因ですし、骨折がそのせいでずれれば、イチからやりなおしなんてこともあります。

動かしていいと言われたらビビりすぎない

しかし、逆に僕が

「ここまではやっていいよ」

と言っても、

「怖くて寝てました」

なんて、極端な人もいます。

 

安静にすればするほど関節はかたまり、筋肉はやせ細り、治療期間が延びてしまいますから、主治医はそのバランスを見て指示をしているので、動かしていいと言われたことは痛みが明らかに増さない限りは少しずつでも動かしていくことが大切です。

まとめ

今回は仙骨骨折の治療法と治療期間の目安について解説いたしました。

そのための前提として仙骨と仙骨骨折の基本をおさらいする必要があり長くなりましたが、そのベースがあってはじめて治療や治療期間が腑に落ちるものですので、押さえていただければと思います。

今回の治療に関する知識をベースに治療を受けていただくと、理解も進んで不安が減って、治癒にポジティブな影響があると思います。

やはり、知らないことは不安ですからね。そういう意味では、主治医に積極的に質問することも大切だと思います。

少しでも参考になりましたら幸いです。

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骨折の治療は骨がくっつきだしてしまうまでの最初の2週間で成否が決まると言っても過言ではありません。

納得いく治療を受けていただくために、こちらの記事を一度お読みください。

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