仙骨骨折 注意すべき後遺症を知って防ぐ・対処する!専門医解説

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歌島 大輔

歌島 大輔

スポーツ整形外科医師(非常勤)さくら通り整形外科
スポーツ整形外科専門医師(川崎市立井田病院・景翠会 金沢病院・さくら通り整形外科 各非常勤医師)として外来診療・手術を行っている。ケガやスポーツ障害という「マイナス」から元通りという「ゼロ」を目指すのではなく、パフォーマンスに変革をもたらす「大きなプラス」を一緒に目指す情報発信やコーチング活動をライフワークとする。

今回は仙骨骨折の注意すべき後遺症を知識として知っていただき、まさに治療中の方はどのように防いでいくか、治療が進んだ人はどのように対処すべきかということにつながるような記事にしたいと思います。

仙骨骨折は骨盤骨折の1つで時に命にも関わりかねない重症なものもあります。それゆえ、後遺症というモノも大きな心配の1つになると思います。

まず仙骨骨折の治療についてはこちらの記事をご参照ください。

仙骨骨折の治療法と期間の目安をスポーツ整形外科医が解説

2017.07.03

後遺症を残さないためにも仙骨骨折後の治療が大切です。

ただ、しっかり治療しても、重症度によってはかなり高確率で残ってしまう後遺症もあります。過度に不安になる必要はありませんが、知らないことが不安を強めることもありますので、ザッとでも頭に入れておいていただければと思います。

こんにちは、スポーツ整形外科医の歌島です。本日も記事をご覧いただきありがとうございます。

それではいきましょう!

仙骨の基本ををおさらい

仙骨骨折の後遺症について解説するにあたっては最低限、仙骨とはどこでどんな役割があって、仙骨骨折にはどんな特徴があるのか?という基本を理解する必要があります。

「そんなのは知ってるよ」という人もおさらい程度にザッと流して確認してください。

仙骨とは?どこ?

まず仙骨とは?

どこにある骨?

ということですが、一言で言えば、お尻のど真ん中の骨です。

引用元:プロメテウス解剖学アトラス解剖学総__運動器系_第2版 医学書院

この仙骨の上には背骨の腰部分である腰椎の一番下である第5腰椎が乗っかり、第5腰椎と仙骨は椎間関節(ついかんかんせつ)という関節を形成しています。

また、仙骨の左右には腸骨(ちょうこつ)といういわゆる腰骨(こしぼね)があって、仙腸関節を形成しています。

そして、下には尾側(びこつ)があります。

仙骨の主な役割は?

仙骨の主だった大切な役割をご紹介します。

骨盤の後ろの壁

まず一番は骨盤を形成している骨の1つあるということが大切です。

骨盤というのは下半身と上半身を繋ぎ、身体のコアとなる部分として運動においても重要な役割を果たしていますし、

骨盤の中には腸や膀胱、生殖器、大血管など非常に重要な臓器を詰め込んである部分でもあります。

この骨盤の真ん中後ろの壁を形成しているというポイントは外せないですね。

仙腸関節を形成する

もう一つは仙腸関節を形成するという点です。

非常に動きの少ない関節ですが、それは右脚、左脚が受けた体重(地面からの反力)を上半身に伝えるという負荷の強さゆえ、腰痛の原因になりやすい関節と考えられています。

脊髄神経の枝の出口

脳から脊髄を通って、神経は脚に向かいます。この神経経路を伝って脚を動かしたり、脚からの感覚を感知したりするわけですが、この脊髄神経が脚に向かう枝が仙骨に開いている穴から出ます。

この脊髄神経の仙骨から出る枝の一部は膀胱や直腸というようないわゆる排泄に関連する部分を支配しているので、そういう意味でも重要です。

仙骨骨折の特徴は?

仙骨の基本を押さえていただいたあとは、 仙骨骨折の特徴になります。

仙骨という骨の特徴を踏まえると、その骨が折れてしまったときの特徴はわかりやすいと思います。

骨盤の骨折は重症になりやすい

仙骨骨折は骨盤骨折の1つで、骨盤の壁です。 この骨盤の壁はほぼ360度前から後ろまであって、「骨盤輪(こつばんりん)」と呼ばれています。

引用元:プロメテウス解剖学アトラス解剖学総__運動器系_第2版 医学書院

この骨盤輪の破綻を起こすような骨折は、骨盤の中の臓器がやられてしまうこともあれば、大きな変形を伴うこともあり、さらに大抵、一般の人が想像する以上の大量出血があります(数リットルなんてこともザラです)。

ということで、かなり重症になりやすいということは頭に入れておく必要があります。

神経症状に注意

神経の枝の出口と述べましたので、神経が仙骨の近くに集まっているということで、骨折によって神経損傷を起こしてしまいリスクがあります。

その場合に当然、神経症状の出現が考えられます。脚のしびれや力が入らないなどの麻痺症状、また、膀胱直腸障害と言って、排尿排便に異常が出たりしますので、注意が必要です。

座るときの負担がキツい

物理的にお尻のど真ん中が仙骨ですから、座るときにダイレクトに負担がかかりやすいと言えます。

脚の骨折であれば座って車椅子に乗っていれば、あまり負荷はかかりませんが、仙骨はそうもいきません。

この負担をどうするか?というのも問題になりやすいです。 

仙骨骨折の注意すべき後遺症と予防法

それでは仙骨骨折の注意すべき後遺症とその防ぎ方ということを解説していきたいと思います。

骨折部の痛みが続く

まず骨折部の痛みが続いてしまうということですね。

これには主に3つの原因があります。

  • 骨がくっつかない結果の痛み(遷延治癒、偽関節)
  • 骨の変形による痛み
  • 筋力低下による痛み

骨がくっつかない結果の痛み(遷延治癒、偽関節)

骨折ですから骨がくっつかないと治らないわけですが、

骨がくっつくのが明らかに遅れているのが遷延治癒(せんえんちゆ)

骨がくっつく力がなくなった、つまり待ってもくっつかないと判断された状態が偽関節(ぎかんせつ)

と言います。

特に偽関節というのは、偽(にせ)の関節と書くくらいですから、骨折部分が動いちゃうわけですね。不安定なわけです。

とすると、本当の関節じゃないわけですから痛いんですね。

これを防ぐにはしっかりと骨のくっつき段階に合わせた安静度(座っていいのか?体重をかけていいのか?走っていいのか?など)をしっかり守り、時に修正していくこと。

骨折が重症で不安定なら、手術でしっかり安定化させる。

など、治療の基本に忠実にやるということですね。

骨の変形による痛み・仙腸関節障害

骨がくっついたとしても骨の変形が残れば、痛みの原因になり得ます。

特に仙腸関節に及ぶ骨折にズレがある場合は、少しでも戻して、しっかり固定する手術がこの変形による痛みのリスクを減らします。

画像引用元(一部改変):運動器外傷治療学 第一版 医学書院

筋力低下による痛み

安静度を守ることが大切と言いましたが、それは「状況に適した安静度」のことであって、何でもかんでも安静にしようってことではありません。

むやみに安静にしすぎてしまうと、お尻周り、下半身の筋力が低下して、その筋力不足が原因で筋の相対的負担が強まり、痛みに繋がってしまうということがあります。

脚の神経症状

仙骨は脚にいく神経の出口ですから、仙骨骨折によって神経を傷めてしまうと、脚に神経症状が出てしまいます。

脚の神経症状というのは、脚の痛み、しびれという感覚の異常であったり、脚に力が入らないという運動神経の異常があります。

この予防には、まず仙骨骨折の時点で脚の動きやしびれなどがないかを確認することが大切です。神経症状がありそうであれば、骨折のどの部分が原因なのか?(外傷ですから、ときに仙骨骨折部以外にも原因が隠れていることがあります)を探します。

これらは主治医を中心とした医師の仕事ですが、患者さんやご家族も気付いたことがあれば医師や看護師に伝えましょう。

膀胱直腸障害(ぼうこうちょくちょうしょうがい)

仙骨から出る神経は脚だけでなく、膀胱や直腸など排泄に関わる臓器の働きも司っています。

 

とすると、排尿、排便の異常(漏らしてしまったり、なかなか出なかったり・・・)が出てしまうこともあります。 これを膀胱直腸障害と言いますが、これもまずは「気付く」ことが大切です。

骨盤の内臓障害

骨盤の中には膀胱、腸、生殖器、大血管など大切な臓器があります。骨盤骨折のときに、これらの臓器損傷が合併していた場合はその臓器の障害が残る可能性があります。

これらの障害を残さないためには、やはり初期の治療が大切です。それぞれの臓器に対応する専門の医師による治療が大切です。

そういう意味でも骨盤骨折は総合病院による集中的な治療が必要になることがあるということです。

仙骨骨折の後遺症が残ってしまった場合の対処法

これら仙骨骨折の後遺症が残ってしまった場合の対処法についてまとめます。

骨折部の痛みが続く

骨折部の痛みが続いてしまうということに関しては、さきほど3つの原因があるとお伝えしました。

それぞれの対処法について解説します。

骨がくっつかない結果の痛み(遷延治癒、偽関節)

遷延治癒の場合はまだくっつく見込みがあるので・・・待ちます。

治癒が遅れている原因というのがあるはずなんですが、それは骨折がもともと重症ということの場合や骨折部に負荷をかけすぎている場合をまず考えます。

長期に安静にしすぎるのは筋力低下の面でオススメできませんが、骨折部に痛みが走るような動きはできるだけ避けるような工夫は必要ですね。

偽関節はかなり稀ですが、偽関節になってしまった骨をくっつけようとすれば、別のところから骨を移植しないといけません。大手術です。

骨の変形による痛み・仙腸関節の痛み

仙腸関節部に変形が残ってしまったときの痛みであれ、体幹の筋力強化によって仙腸関節を安定化させたり、仙腸関節に炎症を抑えるような注射をすることがあります。

こちらの記事で体幹のトレーニングを解説しております。ご参照ください。

グロインペイン症候群を完治させるには?難題に挑む! byスポーツ医

筋力低下による痛み

筋力低下が原因であれば、シンプルですね。トレーニングです。ひたすらトレーニングです。

痛くてトレーニングできないという人もいるかもしれませんが、同じ筋肉を鍛えるにしても方法がいろいろあります。痛いトレーニング種目もあれば、痛くないトレーニング種目もあるかもしれません。

ベストは理学療法士の指導のもとのトレーニングですね。主治医にも相談してみましょう。

脚の神経症状

脚の神経症状が残ってしまった場合の対処法ですが、

しびれや痛みは神経障害性疼痛という痛みになりますので、専用の薬があります。といっても、すごく効くというほどではないので地道に継続していくことになるかもしれません。

改善しないと不安になると思いますが、神経障害は回復に半年、1年とかかることもあるくらいの長期戦ですので、よく患者さんにお伝えするのは、

「治すのは自己治癒力に任せて、あまり治れ治れと強く念じたり、一喜一憂しないようにしましょう。気付いたらあまり気にならなくなっていた。っていうのが多くの回復した人の感想です。」

言い方を間違えて無責任に思われるといやなんですが、神経の過敏状態は回復によくないですから、リラクセーションが重要です。

膀胱直腸障害(ぼうこうちょくちょうしょうがい)

膀胱直腸障害が本格的に残ってしまったら、泌尿器科や肛門科などの専門医とともに対処法を検討することになります。

重症の場合は尿道カテーテルや人工肛門が必要な人もいます。

骨盤の内臓障害

骨盤の内臓障害については起こりうる障害が多岐に渡るので一概に対処法を述べるのは難しいですが、これもやはり各臓器に対応した専門家がいますので、専門科をまたがって治療していくことが必要になります。

まとめ

今回は仙骨骨折の注意すべき後遺症とその予防法、対処法について解説いたしました。

かなりツラい後遺症もあったと思いますが、これらを防ぐのにやはり大切なのは初期の治療です。重症な仙骨骨折であれば集中的に治療がしっかりできる病院で治療を受けたいところですね。

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骨折は最初の2週間が勝負!


骨折の治療は骨がくっつきだしてしまうまでの最初の2週間で成否が決まると言っても過言ではありません。

納得いく治療を受けていただくために、こちらの記事を一度お読みください。

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