骨盤骨折の全治までの治療期間を4パターンに分けて専門医が解説

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歌島 大輔

歌島 大輔

スポーツ整形外科医師(非常勤)さくら通り整形外科
スポーツ整形外科専門医師(川崎市立井田病院・景翠会 金沢病院・さくら通り整形外科 各非常勤医師)として外来診療・手術を行っている。ケガやスポーツ障害という「マイナス」から元通りという「ゼロ」を目指すのではなく、パフォーマンスに変革をもたらす「大きなプラス」を一緒に目指す情報発信やコーチング活動をライフワークとする。

骨盤骨折と言われると重症な響きで全治までの治療期間はどんなものなんだろうと不安になると思います。

ただ、骨盤自体が複数の骨で構成されるモノですし、その折れ具合、折れる場所で重症度が全然違ってきますので、意外と重症じゃないケースもあれば、命に関わるケースもあるというのが骨盤骨折です。

そのため、この記事では骨盤骨折の全治までの治療期間を4つのパターンに分けて解説したいと思います。4パターンに分けてもケースバイケースではありますが、ひとつの目安にはなるかと思いますので参考にしてください。

こんにちは、スポーツ整形外科医の歌島です。本日も記事をご覧いただきありがとうございます。

それではいきましょう!

骨盤骨折の基本おさらい

骨盤を構成する骨と役割

まず骨盤を構成する骨とその役割をおさえていきましょう。

大きな腰骨を形成する腸骨

まず腸骨(ちょうこつ)です。

これはいわゆる「腰骨(こしぼね)」として認識されているかもしれません。

身体の一番外側に出っ張っている骨盤の骨ですね。 骨盤の骨の中でも最大で、外側から後ろ側を占める骨と考えてください。

お尻の真ん中を形成する仙骨・尾骨

後ろ側の骨ということで言うと、真後ろ、つまり、お尻の真ん中を形成するのが仙骨(せんこつ)とその下に連なる尾骨(びこつ)です。

この仙骨、尾骨はいわゆる背骨の一つでもあります。仙骨の上には第5腰椎が連結しています。

また、この仙骨の両脇にはさきほどの腸骨があり、仙腸関節(せんちょうかんせつ)を形成しています。

引用元:プロメテウス解剖学アトラス解剖学総__運動器系_第2版 医学書院

お尻の下の坐骨

次に下の方ですが、姿勢良く座ったときに座面に当たるのが坐骨(ざこつ)

骨盤の一番下と考えるといいでしょう。

一番前、真ん中よりの恥骨

次に一番前側にある恥骨(ちこつ)です。 恥骨は右と左を恥骨結合という部分で線維性に結合しています。

股関節を形成する臼蓋

また腸骨の一部ですが、重要なパートとして、 股関節の受け皿側である臼蓋(きゅうがい)があります。

もしくは寛骨臼(かんこつきゅう)と呼んだりします。

骨盤の骨折は大きく前方成分と後方成分でわける

これらの骨の名前で骨折名も呼ばれます。

恥骨骨折、坐骨骨折、恥坐骨骨折、腸骨骨折、仙骨骨折などなど

しかし、もっと大雑把に言うと 前方成分の骨折と後方成分の骨折、そして両方にまたがる骨折という分け方で重症度や治療法を考えたりもします。

前方成分:恥骨・坐骨

前方成分は恥骨と坐骨からなります。

前方部分だけの骨折は骨盤骨折の中では比較的軽症で、手術も長期の安静も必要じゃないケースが多いです。

後方成分:腸骨・仙骨

後方部分は腸骨と仙骨であり、この後方部分の骨折でズレが大きい場合は、大抵前方部分も折れたり、恥骨結合が損傷していたりします。

そのため、前方成分だけの骨折よりも重症であることが多いです。

重要な臼蓋

重要な股関節を形成する部分に骨折が及んでいると厄介です。

関節のスムーズな動きのためには骨がズレてしまってはいけないわけです。そのためミリ単位でズレを治すことを求められます。

骨盤骨折の全治までの治療期間の目安と治療内容

では、骨盤骨折の全治までの治療期間についての目安とその治療内容を解説していきます。

手術なし & 歩行可能

まず4パターンの中で一番軽症なタイプです。

手術を必要とせず、かつ、体重がかからない部位の骨折なので物理的には歩行可能な状態です。

たいていは恥骨骨折坐骨骨折がこのタイプになります。

 

この場合は最初は痛みが強くて歩くのも大変かもしれませんが、松葉杖などを使いながらもリハビリを行って、痛みの範囲内で日常生活を送っていただきつつ、1–3週間毎にレントゲンチェックをして1–2ヶ月で骨が安定してくっついてきたのを確認すれば特に制限なくスポーツなども行っていいというのが1つの目安と治療内容です。

手術なし & 歩行不能

次に手術までは必要なさそう(ズレが少ない、股関節にかからないなど)だけど、歩行は待たざるを得ないという場合ですが、

この場合はさらに、骨盤の左右どちらかの骨折で、片脚は体重をかけられるかどうかというのも治療期間や治療内容をわけるポイントです。

片脚に体重がかけられれば、松葉杖で歩けます(松葉杖が使える人に限りますが)。

しかし、それも難しい場合、下手したら、座るだけでも骨折部に負担がかかることも骨盤ですからあります。

その場合は骨折部分が安定するまで、1ヶ月くらいベッド上で安静にしないといけないこともあります。

ということで、ケースバイケースな部分が出てきますが、体重をかけていいくらい骨がくっつくまでは1.5から2ヶ月くらいかかることが多いので、そこから歩き出して、スポーツなどの負荷が強い活動は3ヶ月以上かかると考えた方がいいと思います。

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手術あり & 歩行可能

手術は必要(骨折のズレが大きめ)だけれども、荷重がかかる部位じゃないので比較的早めから歩けるというケースです。 恥骨や坐骨のズレのある骨折が多いです。

この場合はまず骨折してからはたいてい即入院で、手術が1週間以内くらいに行われ、その後、1–2週間のうちに歩行練習が始まるという感じでしょう。

手術の傷などが落ち着き、日常生活が遅れるくらいになれば(2–3週目安)退院となり、そして、それ以降は、先ほどと同様、1.5から2ヶ月くらいで骨がくっついて、スポーツなどの負荷が強い活動は3ヶ月以上かかるというのが目安です。

手術あり & 歩行不能

荷重がかかる部分の骨折で手術が必要な場合が一番時間がかかります。

この場合もまず骨折してからはたいてい即入院で、手術が1週間以内くらいに行われ、その後、股関節や膝などをリハビリテーションとして動かしていきます。これは関節がカタくならないよう、拘縮予防の目的と、筋力が落ちないように筋力訓練の意味があります。

レントゲンを定期的にみながら、骨が安定し、くっついてきたと判断すれば歩行訓練に移ります。術後4–6週間が目安です。

そこから重症度に応じて体重のかけ具合を上げていき、通常通り歩ける状態までさらに2–4週くらいかかるということで、

歩けるまでに1.5から3ヶ月かかります。

これだけ時間がかかるということは、さらに筋力が戻ったり、関節の痛みや拘縮などが改善したりということにも時間がかかることを意味します。

そのため、スポーツなどに復帰するには半年以上かかることもあります。

骨盤骨折の全治までの治療期間が延びる要因

この骨盤骨折の全治まで治療期間の目安を解説しましたが、さらに治療期間が延びてしまう要因があります。それを解説します。

大量出血

骨盤骨折で特に注意したいのは大量の出血です。ときに2–3L以上も出血してしまい大量の輸血が必要なケースがあります。

これは治療期間が延びるという以上に命の危険です。

そのため、この出血を落ち着かせ(手術や圧迫など)、出血した分を輸血や点滴で補って、まず命を救うということを主眼に救急治療が行われます。

その結果、体全体にダメージが残り、骨盤の骨折自体に手術が必要でも十分な手術できなかったり、手術を待たないといけないこともあります。

骨折が臼蓋部に及ぶ

骨折が股関節の受け皿である臼蓋部分に及んでしまうと、ちょっとのズレも後遺症のリスクになりますので、手術をしてもしなくても、体重をかけるリハビリはとても慎重になります。

内臓の損傷あり

当然、内臓に損傷があればその治療で安静や手術が必要になりますので、治療期間が延びることは考えられます。 これもどの内臓がどの程度損傷しているかで全然変わってきます。

まとめ

骨盤骨折の全治までの治療期間の目安を解説いたしました。

この治療期間を早めるのに患者さん自身ができることは、基本的にはリハビリテーションです。このリハビリテーションを主治医の指示を守りながら、その中で痛みに注意しながらも筋力訓練などはどんどん積極的に行っていくということがポイントですね。

ただ、ときに頑張りすぎてしまって、痛みが出たり、骨にズレがでてしまったりして、逆に全治が遅れてしまうこともありますので、主治医や理学療法士とコミュニケーションをとりながらやっていきましょう。

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骨折は最初の2週間が勝負!


骨折の治療は骨がくっつきだしてしまうまでの最初の2週間で成否が決まると言っても過言ではありません。

納得いく治療を受けていただくために、こちらの記事を一度お読みください。

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どうしても多くの患者さんを拝見している中で時間をかけて人1人と向き合う時間がないのが悩みですが、それでも、患者さんの希望を、理想的にはゴールをできるだけ掴んで、お手伝いできること、提供できることを常に探しながら診療しております。

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