骨盤骨折の手術 複雑すぎる骨盤骨折をシンプルにわかりやすく 専門医解説

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歌島 大輔

歌島 大輔

スポーツ整形外科医師(非常勤)さくら通り整形外科
スポーツ整形外科専門医師(川崎市立井田病院・景翠会 金沢病院・さくら通り整形外科 各非常勤医師)として外来診療・手術を行っている。ケガやスポーツ障害という「マイナス」から元通りという「ゼロ」を目指すのではなく、パフォーマンスに変革をもたらす「大きなプラス」を一緒に目指す情報発信やコーチング活動をライフワークとする。

骨盤骨折はかなり複雑な骨折です。手術が必要な場合も様々な手術法があり、そして、2人として同じ骨折はないと言われるくらいに骨折形態はバリエーションに富みます。

ですが、それでも基本的な考え方や使うインプラントがありますので、その基本をシンプルにおさえていただくと、複雑に見える骨盤骨折も少し捉えやすくなるかもしれません。

こんにちは、スポーツ整形外科医の歌島です。本日も記事をご覧いただきありがとうございます。

それではいきましょう!

骨盤骨折の基本おさらい

骨盤を構成する骨と役割

まず骨盤を構成する骨とその役割をおさえていきましょう。

大きな腰骨を形成する腸骨

まず腸骨(ちょうこつ)です。

これはいわゆる「腰骨(こしぼね)」として認識されているかもしれません。

身体の一番外側に出っ張っている骨盤の骨ですね。 骨盤の骨の中でも最大で、外側から後ろ側を占める骨と考えてください。

お尻の真ん中を形成する仙骨・尾骨

後ろ側の骨ということで言うと、真後ろ、つまり、お尻の真ん中を形成するのが仙骨(せんこつ)とその下に連なる尾骨(びこつ)です。

この仙骨、尾骨はいわゆる背骨の一つでもあります。仙骨の上には第5腰椎が連結しています。

また、この仙骨の両脇にはさきほどの腸骨があり、仙腸関節(せんちょうかんせつ)を形成しています。

引用元:プロメテウス解剖学アトラス解剖学総__運動器系_第2版 医学書院

お尻の下の坐骨

次に下の方ですが、姿勢良く座ったときに座面に当たるのが坐骨(ざこつ)

骨盤の一番下と考えるといいでしょう。

一番前、真ん中よりの恥骨

次に一番前側にある恥骨(ちこつ)です。 恥骨は右と左を恥骨結合という部分で線維性に結合しています。

股関節を形成する臼蓋

また腸骨の一部ですが、重要なパートとして、 股関節の受け皿側である臼蓋(きゅうがい)があります。

もしくは寛骨臼(かんこつきゅう)と呼んだりします。

骨盤の骨折は大きく前方成分と後方成分でわける

これらの骨の名前で骨折名も呼ばれます。

恥骨骨折、坐骨骨折、恥坐骨骨折、腸骨骨折、仙骨骨折などなど

しかし、もっと大雑把に言うと 前方成分の骨折と後方成分の骨折、そして両方にまたがる骨折という分け方で重症度や治療法を考えたりもします。

前方成分:恥骨・坐骨

前方成分は恥骨と坐骨からなります。

前方部分だけの骨折は骨盤骨折の中では比較的軽症で、手術も長期の安静も必要じゃないケースが多いです。

後方成分:腸骨・仙骨

後方部分は腸骨と仙骨であり、この後方部分の骨折でズレが大きい場合は、大抵前方部分も折れたり、恥骨結合が損傷していたりします。

そのため、前方成分だけの骨折よりも重症であることが多いです。

重要な臼蓋

重要な股関節を形成する部分に骨折が及んでいると厄介です。

関節のスムーズな動きのためには骨がズレてしまってはいけないわけです。そのためミリ単位でズレを治すことを求められます。

骨盤骨折の手術の基本コンセプト

骨盤骨折の手術において達成したいこと、手術の狙い・・・ つまり、基本的なコンセプトについて解説していきます。

骨盤骨折で手術が必要な場合

基本コンセプトを理解するには手術が必要なケースを理解することです。

それは

  • 骨のズレが大きいために骨がくっつかない or くっついたあとの後遺症が懸念される場合
  • 臼蓋部分のズレがある場合(股関節なので少しのズレも後遺症のおそれ)
  • 骨折が不安定で内臓損傷や血管損傷のリスクがある or 出血がコントロールできない

というようなケースです。

そう考えると骨盤骨折の基本コンセプトがみえてきます。

ズレている骨を整復して固定すること

まず当然ながらズレている骨を戻すこと(整復)ですね。

そして、その状態でしっかりと固定(動かなくすること)が必要です。

一時的に無理のない範囲で戻して固定すること

ただ、骨盤骨折をキレイに戻して固定するためには身体の奥深くの骨盤の骨に到達するために筋肉を裂いて裂いて、血管を結紮しながら出血をなんとか抑えながらの手術をしても、それでもかなり出血します。

ダメージが大きな手術なので、全身状態によってはそれができないこともありますので、その場合は無理のない範囲で戻して固定するということをコンセプトとした手術を行うこともあります。

骨盤内臓器の修復、出血コントロール

さらには骨盤内の臓器が損傷していたり、大事な血管が損傷していたりすれば、それぞれの専門科の医師による手術が行われます。

骨盤骨折の手術方法

このコンセプトのもと行われる手術ですが、その方法を簡単に解説します。

手術に使うインプラント

まずは手術に使うインプラントを知っておきましょう。折れた骨を固定するにはチタン製やステンレス製の強い金属を骨に打ち込んで固定します。

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スクリュー

まずはスクリュー、すなわち、ネジですね。

これは大小、長さも様々のものがあり、骨折部分を貫くようにしてスクリューを打つだけで固定できる骨折もあります。

画像引用元:運動器外傷治療学第一版 医学書院

プレート

スクリューだけでは十分な固定ができない骨折の場合はプレートを使うことも多いです。プレート、すなわち「板」ですが、様々な形をした板状の金属に穴が空いていて、そこからスクリューを打つことができます。

画像引用元:運動器外傷治療学第一版 医学書院

つまり、プレート越しに何本もスクリューを打つことでプレートで骨折部分を架橋して固定しようとするわけですね。

創外固定(そうがいこてい)

ここまでのスクリューやプレートは主に骨折部分をしっかり展開(直接見えるようにする)して、打ち込むインプラントですが、

それをすると全身状態が持たないという場合や緊急時には、皮膚に小さい傷だけつけて骨に数本のスクリューを打ち込んでいって、そのスクリューを皮膚の外で柱を使って繋いでいくことで固定する方法創外固定と言います。

傷の外=創外での固定ということですね。

前(恥骨・坐骨)の固定

前方成分の固定では特に恥骨や恥骨結合を修復することが多いです。

スクリューだけで固定することも部位によってはありますが、細い形をしたプレートを使うことが多いです。

画像引用元:運動器外傷治療学第一版 医学書院

すぐ近くに膀胱や生殖器があるので、その損傷を注意しながら手術します。

後ろ(腸骨・仙骨)の固定

後方成分の固定はなかなか厄介です。

お尻はご存じの通り、脂肪も筋肉も分厚いですよね。その奥に後方の骨があります。また、時には前から内臓をよけながら骨折を固定しにいくこともあり、

どちらにしろ出血も多くなりやすいですし、手技的にも難しい手術です。

 

この後方成分がずれていて手術が必要な場合は、かなりの力でズレてしまっていると考えるべきです。それだけ強く大きな骨ですからね。

とすると、手術で戻して、かつ、その状態で固定するのも、その力に抵抗できないといけません。ですから、弱い金属では太刀打ちできないので、多少大きかったり長かったり、太いインプラントを使うことが多いということも頭に入れておいていいと思います。

画像引用元:運動器外傷治療学第一版 医学書院

画像引用元:運動器外傷治療学第一版 医学書院

臼蓋(きゅうがい:股関節)の固定

股関節を形成する臼蓋部分の固定手術もかなり難しい手術です。

臼蓋自体が球型で3次元的に整復が難しいですし、また、股関節の奥深くですから、やはり骨折部分までのアプローチ、展開が大変です。

これは大抵、専用のプレートを使うことが多いです。

まとめ

今回は骨盤骨折の手術についてシンプルにわかりやすくを目指して解説いたしました。

手術をするにはその目的、狙いがあり、それを基本コンセプトとしてお伝えしましたが、その狙いを達成するためにいろいろなインプラントを使って、いろいろな方法を使うということで考えていくと理解しやすいと思います。

参考になりましたら幸いです。

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骨折は最初の2週間が勝負!


骨折の治療は骨がくっつきだしてしまうまでの最初の2週間で成否が決まると言っても過言ではありません。

納得いく治療を受けていただくために、こちらの記事を一度お読みください。

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どうしても多くの患者さんを拝見している中で時間をかけて人1人と向き合う時間がないのが悩みですが、それでも、患者さんの希望を、理想的にはゴールをできるだけ掴んで、お手伝いできること、提供できることを常に探しながら診療しております。

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