肘の骨折で注意したい後遺症を専門医が解説 大人と子どもで違う

スポンサード リンク

The following two tabs change content below.
歌島 大輔

歌島 大輔

スポーツ整形外科医師(非常勤)さくら通り整形外科
スポーツ整形外科専門医師(川崎市立井田病院・景翠会 金沢病院・さくら通り整形外科 各非常勤医師)として外来診療・手術を行っている。ケガやスポーツ障害という「マイナス」から元通りという「ゼロ」を目指すのではなく、パフォーマンスに変革をもたらす「大きなプラス」を一緒に目指す情報発信やコーチング活動をライフワークとする。

肘の骨折は後遺症のリスクが他の関節の骨折に比べて高いと言われています。

もちろん重症度や年齢にもよりますが、常に注意して治療を受けていただきつつ、リハビリも行っていただきたい骨折部位です。

今回はその注意したい後遺症についての知識をできるだけわかりやすくまとめてみました。

こんにちは、スポーツ整形外科医の歌島です。本日も記事をご覧いただきありがとうございます。

それではいきましょう!

肘の骨折の基本をまず復習

まず肘の骨折の基本について
復習いたしましょう。

こちらの記事で詳しく解説しておりますので、
ご参照ください。

肘の骨折の症状をていねいに専門医が解説

2016.11.04

肘の骨は3つ!

まず基本中の基本ですが、
肘の骨は3つです。

上腕骨という
肘から肩にかけての骨と

前腕の骨、つまり肘から手首までの
橈骨
尺骨です。

引用元:プロメテウス解剖学アトラス解剖学総__運動器系_第2版 医学書院

肘の骨の近くには手を支配する3つの神経が走る

  • 正中神経
  • 尺骨神経
  • 橈骨神経

が肘の骨の周りを走っている

ということです。

引用元:プロメテウス解剖学アトラス解剖学総__運動器系_第2版 医学書院

引用元:プロメテウス解剖学アトラス解剖学総__運動器系_第2版 医学書院

引用元:プロメテウス解剖学アトラス解剖学総__運動器系_第2版 医学書院

肘の骨にはたくさんの筋肉が付着する

もう一つの特徴としては、
筋肉の付着部が多いと言えます。

例えば、肘頭は
肘を伸ばす上腕三頭筋が付着しています。

そういった付着部がたくさんあるため
剥離骨折の好発部位でもあります。

肘の剥離骨折については
こちらの記事をごらんください。

肘の剥離骨折とは?これを読めばまるごと理解 専門医解説

2016.10.24

肘関節は安定した関節

肘関節はもともと
曲げて、伸ばして

という動きしかないと言ってもいいくらいに
動きのバリエーション、方向は少ないです。

そのため、
多方向に動く肩などと比べると、
非常に脱臼しにくい安定した関節と言えます。

肘の骨折の主な3つの種類

肘の骨折としては、
3つの骨、それぞれで起こりえます。

上腕骨遠位端骨折

まず上腕骨ですが、
肘側を遠位端とひとくくりで言ってしまえば、

上腕骨遠位端骨折ということになります。

ただ、実際は
上腕骨の肘部分は

内側上顆、外側上顆、
小頭、滑車

などと呼ばれるパートにわかれていて、

それぞれの部位の骨折が起こりえますし、
部位によって細かく治療法が変わります。

ここでは大まかな内容を
つかんでいただければと思いますので、

上腕骨の遠位、つまり肘の方は、
かなり複雑な構造をしている

それをひとくくりに言ってしまえば、

上腕骨遠位端骨折という

ということだけご理解いただければと思います。

橈骨頭骨折

橈骨の場合は
橈骨頭骨折か、
その少し根本よりである
橈骨頚部骨折

ということになります。

肘頭骨折

尺骨については肘頭骨折が
典型的な骨折として
頻度が高いですが、

他にも肘の前方側の突起である
鉤状突起骨折などもあります。

肘頭骨折についてはこちらをご参照ください。

肘頭骨折の基本からリハビリまで専門医解説

2016.11.04

大人の肘の骨折で注意したい後遺症

肘の骨折において注意したい後遺症を解説してまいります。

まずは大人の肘の骨折についてです。

大人の場合はこどもに比べて、骨折の治癒に時間がかかること軟骨の水分が少なく、すり減りやすいこと関節がかたくなりやすいことなどが特徴です。

軟骨のすり減りからの変形(変形性肘関節症)

まずは骨折が関節面、つまり軟骨部分にまで及んでいて、かつ、しっかりズレなくくっつかなかった場合(軟骨に段差ができてしまった)は、その状態で肘を動かしていくにつれて、軟骨がすり減っていってしまいます。

これを外傷性変形性肘関節症と呼ばれます。

こうならないための注意は何より、軟骨面にズレがある場合は、出来る限り手術で整復して固定すること。固定した後も患部に無理な負荷をかけて(手をついて体重をかけてしまうなど)、骨折部が再びズレてしまうようなことがないようにすることです。

そして、こうなってしまったときの対処法の一番典型的なのは人工関節に置換してしまうことです。これは大きな手術で、手技的にも簡単ではないので、できればそうならないようにしたいところですね。

肘のまわりの神経障害(しびれ、麻痺)

肘周りには大切な神経が複数走っているということは何度か述べておりますが、この神経を傷めてしまう可能性があるタイミングがいくつかあります。

  • 骨折した瞬間(ズレた骨などによって)
  • 骨折を整復した瞬間
  • 骨折後にだんだん腫れることによる神経圧迫
  • 骨折後の包帯やギプスによる神経圧迫
  • 手術による神経損傷
  • 手術後の腫れによる神経圧迫
  • 手術後の包帯やギプスによる神経圧迫

などなどですね。

これだけ注意するタイミングがあるわけですが、要は手のしびれや指の動きに異常がないかというのを自分でも積極的に確認していくこと、そのためにも指はよく動かしていくことがおすすめです。

スポンサード リンク

肘関節拘縮(曲がらない、伸びない)

大人の場合は骨がくっつくまでに6週間くらいかかるのが一般的ですが、そのくっつく前に肘を動かすリハビリをしてしまうと、骨折がズレてしまいます。

しかし、6週間、肘を動かさなければ、大人の場合はほぼ確実に肘関節がかたくなります。つまり、曲がらないし、伸びないという状態です。

そのため、多くの肘関節骨折では手術で強く骨折部を固定した上で、骨がくっつく前から肘の曲げ伸ばしのリハビリを行います。

リハビリについてはこちらの記事をご参照ください。

肘の骨折のリハビリ方法 伸びない!曲がらない!を専門医が解決

2017.12.09

それでもなお、肘が曲がらない、伸びないという拘縮状態が起こってしまうことがあります。

その場合には関節受動術(かんせつじゅどうじゅつ)と言って、硬くなってしまった関節包や靭帯、もしくは曲がらない、伸びない原因となっている骨棘(こつきょく)という骨の棘を削る手術を行います。

子どもで注意したい肘骨折後の後遺症

次に子どもで注意したい肘の骨折後の後遺症です。

girl with a broken arm

子どもの場合は、骨がくっつくまでの期間は短いですし、関節も硬くなりにくいというメリットがありますが、その後、骨折した部分も含めて、骨は成長して伸びていくということが注意点です。

成長に伴って変形が進んでしまうこと(成長障害)

骨折が骨端線という成長する部分に及んでいる場合が多いのですが、肘の場合はこの骨端線が3次元的にたくさんあります。

そして、その骨端線の痛み具合や、骨折の整復具合によっては、

その部分の成長が遅くなったり、早く止まってしまって、肘が変形してしまうことがあります。

手のひらを身体の前に向けて、肘を伸ばした状態で、前腕が外側に向かって曲がる外反肘変形(がいはんちゅうへんけい)とその逆の内反肘変形(ないはんちゅうへんけい)が代表的です。

変形が進んだ結果の神経障害(遅発性神経麻痺)

そして、これらの変形の結果、神経の走行が変わってしまって、神経障害が起こってしまうことがあります。

例えば、外反肘変形では肘の内側が飛び出すような(「く」の字の頂点)状態になりますので、その肘の内側を走る尺骨神経が引っ張られ、さらに骨に圧迫されて、尺骨神経麻痺を起こしてしまいます。

これは年単位で変形してきた骨による神経麻痺ですので、骨折からはかなり時間が経っていることが多いため、遅発性神経麻痺と呼んでいます。

こうなってしまうと治療は待ったなしです。

変形してしまった骨を真っ直ぐに近づけるような「骨切り術(こつきりじゅつ)」というものを行うことが多いです。これも熟練の業が必要な難しい手術です。

まとめ

今回は肘の骨折後の注意したい後遺症について解説いたしました。少しでも参考になりましたら幸いです。

スポンサード リンク

骨折は最初の2週間が勝負!


骨折の治療は骨がくっつきだしてしまうまでの最初の2週間で成否が決まると言っても過言ではありません。

納得いく治療を受けていただくために、こちらの記事を一度お読みください。

当サイト管理人 歌島の診察希望


当サイト管理人の歌島は関東の複数の病院で診療を行っております。

どうしても多くの患者さんを拝見している中で時間をかけて人1人と向き合う時間がないのが悩みですが、それでも、患者さんの希望を、理想的にはゴールをできるだけ掴んで、お手伝いできること、提供できることを常に探しながら診療しております。

プロフィールはこちらをご参照ください。
スポーツコーチングドクター歌島のプロフィール

ABOUTこの記事をかいた人

歌島 大輔

スポーツ整形外科専門医師(川崎市立井田病院・景翠会 金沢病院・さくら通り整形外科 各非常勤医師)として外来診療・手術を行っている。ケガやスポーツ障害という「マイナス」から元通りという「ゼロ」を目指すのではなく、パフォーマンスに変革をもたらす「大きなプラス」を一緒に目指す情報発信やコーチング活動をライフワークとする。