距骨骨折で後遺症を残さないためのすべて 専門医解説

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歌島 大輔

歌島 大輔

スポーツ整形外科医師(非常勤)さくら通り整形外科
スポーツ整形外科専門医師(川崎市立井田病院・景翠会 金沢病院・さくら通り整形外科 各非常勤医師)として外来診療・手術を行っている。ケガやスポーツ障害という「マイナス」から元通りという「ゼロ」を目指すのではなく、パフォーマンスに変革をもたらす「大きなプラス」を一緒に目指す情報発信やコーチング活動をライフワークとする。

距骨骨折(きょこつこっせつ)についての解説記事です。

距骨は足首の関節を構成する骨の1つで、その中でも最も大切な骨と言ってもいいかもしれません。 そんな重要な骨にもかかわらず、骨折してしまうと後遺症を残しやすい骨でもあり、この距骨骨折はなかなか治療が難渋しやすく、われわれ整形外科医も特に注意が必要な骨折として認識しています。

この距骨骨折でいかに後遺症を残さないようにするかをテーマに、距骨とは?という基本から、どんな後遺症があるのか?治療は?リハビリは?というような内容をお届けします。

こんにちは、スポーツ整形外科医の歌島です。本日も記事をご覧いただきありがとうございます。

それではいきましょう!

距骨骨折とは?

距骨骨折とは?という基本から入ります。

距骨は足首の鍵となる骨

距骨というのは、足首を構成する大切な骨です。

足首、足関節はスネの骨(脛骨と腓骨)が作るスペースに距骨がはまり込むような形をしています。

鍵と鍵穴という関係で言えば、鍵穴を脛骨と腓骨が作り、鍵が距骨であるということにあります。 なんとなく大切さがわかるかと思います。

距骨は関節成分が多いので骨折すると厄介になりやすい

距骨は向かいあう脛骨と腓骨と(さらに下には踵骨と、前には足根骨と・・・)関節を作るので、その向かい合う面は軟骨になっています。

さまざまな骨と関節を作るので、距骨の表面の大部分は軟骨です。

ですから、この距骨が折れてしまうと軟骨も一緒に折れていることが多いわけですが、この軟骨も一緒に折れている骨折を「関節内骨折」と呼び、治りが悪いことで有名です。

関節の中、軟骨は血の巡りが悪いので治りにくいということと、軟骨はスムーズないと関節の動きに悪影響がでるからというのがその理由です。

距骨骨折の注意したい後遺症

この距骨骨折において注意したい、防ぎたい後遺症を3つお伝えします。

距骨壊死(きょこつえし)

これは特に距骨骨折に特徴的ですが、骨が壊死してしまうということです。

壊死というのは壊れて死ぬと書くように怖い病態ですが、 実際、骨や軟骨の細胞が死んでいって骨が壊れていてしまう そんな状態です。

距骨自体が軟骨が多く、多くが関節に面しているゆえ、血の巡り(血流)が悪いというのはお伝えしたとおりですが、その結果として、血のめぐりが骨折によってさらに減少して、いよいよ骨の栄養が足りなくなって、壊死してしまう。

これが距骨骨折後に起こる骨壊死です。

 

そうなると、距骨がだんだんと潰れていってしまい、足首の関節の形が変形してしまいます。

それは次に解説する変形性関節症という結果になってしまいます。

変形治癒・変形性関節症(軟骨のすり減り)

まず骨折がずれたままくっつくことを変形治癒(へんけいちゆ)といいますが、特に関節に面した部分の変形治癒は関節のスムーズな動きや体重を支えるはたらきを残ってしまうことにダイレクトにつながります。

その結果、次に述べる足首の可動域制限(かたくなる)状態や体重をかけた時の痛みが起こってしまうことがあるのと、

さらにその状態から徐々に軟骨がすり減って、変形性関節症という状態になってしまうことがあります。

変形性関節症が重度となると、人工関節手術をするか、関節を固定してしまう(動かなくしてしまう)か、という大きな手術が必要になることがあります。

可動域制限(足首がかたくなる)

ここまで解説した距骨壊死、変形治癒、変形性関節症になってしまえばもちろん、足首の可動域(動かせる範囲)は狭くなります。

しかし、そこまで大きな後遺症でなくてもリハビリが十分でない場合などに可動域制限が残ることは少なくありません。

距骨骨折の治療法

この距骨骨折の治療法について、いかに後遺症を防ぐか?という視点で考えながらご紹介したいと思います。

いかに後遺症を防ぐかということで言うと、そのポイントは

  • できるかぎり元の形に整復して固定し、その状態で癒合を待つこと
  • できるかぎり早めに足首の可動域訓練を開始すること

この2つになります。

これは他の骨折でも同様ですが、特に後遺症のリスクが高い距骨骨折では重視するポイントです。

ギプスなどの保存治療

まずは骨折のズレがすくない場合ですね。

この場合はシーネやギプスなどを使って固定して骨がくっつくのを待つことができます。しかし、先程述べた「できるかぎり早めに足首の可動域訓練を開始すること」はギプスで固定しているうちは達成できませんね。

ですから、より早く可動域訓練を開始して、固くならないようにするという目的で手術をするのもアリなんですが、

当然、手術にはリスクが伴います。

足首周りを切開して、より周囲にダメージを加えることになりますから、その悪影響と早く可動域訓練を行えるということを天秤にかけて考えないといけません。

そして、ズレがほとんどない骨折の場合はその天秤の結果、手術を行わないという選択肢をとることの方が多い印象があります。誰だって手術はしたくないですからね。

手術治療

それに対して、距骨骨折がずれているケース。特に関節に面している部分が2mm以上ずれているような状態では積極的に手術を行うケースが多いです。

また、距骨が脱臼してしまっているケースもあり、当然、手術が必要になります。

手術方法は骨をいい位置に整復して、スクリューと呼ばれるネジで固定することが一般的です。骨折の固定法としては一般的には他に髄内釘(ずいないてい)という太い芯棒を通す手術やプレート固定という穴あきの板を骨にあてがってスクリューを入れていく手術が有りますが、関節面が多く形が複雑な距骨ではそれらの設置は難しく、スクリューや針金による固定がメインになっています。

 

それゆえ、手術による固定性は不十分になることがあり、可動域訓練を早く始められないことも少なくありません。

そういう意味でもズレが少ないなら保存治療が選択されることが多いわけですね。

治療に使う装具

治療のプロセスにおいてよく使用される装具について解説します。

足関節安定化サポーター

足首が特に内側、外側方向にグラつかないようにするためのサポーター、装具です。これは捻挫やくるぶしの骨折でもよく使われますね。

横に支柱がついたタイプはより安定性が高く

支柱なしでバンドのみのタイプは安定性は落ちますが、動かしやすいという特徴があります。

どちらも体重をかけていい状態、足首を動かしていい状態から使うものです。

免荷装具(PTB装具)

もうひとつ、ときに使われるのがPTB装具と呼ばれるもので、足首、つまり骨折部分に体重がかからず歩けるようにする装具です。

どうやるのか?というと、

足が地面に着いた、その力を装具がダイレクトに膝のお皿に伝えてしまうという方法です。

ですから、この装具はお皿の下から支えるような形状をしていて、完全にオーダーメイドでフィットするものを作らないと意味がありません。

 

距骨骨折の場合は骨壊死などのリスクもあり、重症度や経過によっては何ヶ月も(ときには1年以上)荷重をかけないように生活する必要があることがあります。そういった場合には役に立つ装具だと言えるでしょう。

または何らかの理由があって(腕の怪我も併発している、高齢で体力がないなど)、松葉杖による片足歩行ができない場合もPTB装具を考える場面です。

距骨骨折のリハビリポイント

距骨骨折のリハビリテーションのポイントです。

可動域制限という後遺症を残さないためにはリハビリがとても大切であることは言うまでもありません。 しかし、最優先すべきは骨ができるだけ元の形に近い形でくっついてくれること。その結果として骨壊死も変形性関節症も起こさないということです。

そのため、リハビリテーションとして可動域訓練を開始する時期、歩行訓練において体重をかけ始める時期は手術を行った主治医とよくよく相談して決めていく必要があります。

その上で足首を動かしていっていいという段階では特に最初は背屈と底屈の可動域をしっかり拡大していきましょう

こちらの記事で詳しく解説しております。

足首骨折後のリハビリを3ステップで解説

2016.09.20

足首の骨折後のリハビリ:足関節周りの筋力訓練

まず足首周りの筋肉の筋力訓練です。

やはり骨折後は動かせない期間がありますので、
必ず筋力は落ちています。

その状態のまま、
急に歩き出せば、不安定な状態で危険です。
そのため、骨折部位の安定性に応じて、
筋力訓練を加えていきます。

ギプスなどで固定したままできる筋力トレーニング

この筋力訓練はギプスやシーネなどで固定した状態でも、
開始できます。

それは等尺性収縮を利用した筋力トレーニングです。
筋肉の収縮様式には3つあり、
遠心性、等尺性、求心性とありますが、

等尺性というのは、筋肉が収縮している間、
筋肉の長さが変わらない・・・
つまり、関節が動かない収縮です。
例えば、肘を90度に曲げたまま、
力こぶを作るように力を入れると、
上腕二頭筋の等尺性収縮が起こったことになります。

 
つまり、関節を動かさなくても、
筋肉を働かせることはできるわけですね。
そのため、ギプスやシーネの中で、
つま先を上に上げる(背屈)
下に下げる(底屈)

という方向の力を入れて、

つま先を上に上げる力の時は、
下腿(すね)の前側

つま先を下に下げるときには
下腿(すね)の後ろ側の筋肉が働くのを感じましょう。
これは足首の底背屈の等尺性収縮訓練ですが、

つま先の趾(ゆび)の動きは
シーネやギプスをしていても、
基本動かせる状態になっているはずです。

それはつまり、
足首の骨折においては、
足のゆびは動かしていいということです。

むしろ、積極的に動かすべきなんですね。
それは筋力を維持することと、
筋肉を使うことで、
足の浮腫(むくみ)を減らすことが目的です。

ステップ1:足関節周囲の筋力訓練
1.足関節の背屈(等尺性)
2.足関節の底屈(等尺性)
3.足のゆびの背屈
4.足のゆびの底屈

5秒力を入れるx10回 x3セット/日
それぞれ毎日やりましょう。

足首の骨折後のリハビリ:足関節底背屈運動

次にギプスなどの固定が外れたら、
足首の底背屈運動になりますが、

ここで、足首の動きをもう少し理解する必要があります。
つま先を上に上げるのが「背屈」
逆につま先を下に下げるのが「底屈」
というのは先ほど述べました。

さらに、下の距踵関節も含めて、
左右に捻る「回内」「回外」
さらに、足全体での左右への動きである、
「内転」「外転」
という動きがあります。
これらは単純に言うと、
つま先を上下させる底背屈に対して、
横方向に動かすことになります。

特に果部骨折においては、
横の壁がやられています。

そのため、骨を金属で固定していても
この横方向の動きはずれるリスクが心配です。
まずやるべきことにはなりません。
それと同時に、
歩く、走るという動作において、

もっとも大きく、しっかり動かなくてはならないのは、

底屈、背屈になります。

歩くときも、走るときも、
つま先は上下に動きますから。

これを自分でやる場合は、
手やタオルを使って、
つま先を動かしていきます。

足首 骨折

画像引用元:ビジュアル実践リハ-整形外科リハビリテーション 羊土社

そのときに、横方向の捻りを加えないよう
気をつけることが大切です。
また、最初は腫れていますし、
動かすと痛みもあります。

ですから、徐々に動かせる範囲、
すなわち可動域を広げていくことが大切です。
通常のストレッチは痛みが出ない程度に伸ばすのが原則ですが、

この場合は可動域訓練は、
主治医の許可があれば、多少の痛みを伴いながらも、
動かせる範囲を広げることに注力します。

ステップ2:足関節底背屈可動域訓練
1.足関節の背屈 5秒20回 3セット
2.足関節の底屈 5秒10回 3セット

距骨骨折の全治・完治までの治療期間の目安

距骨骨折の全治・完治までの治療期間はどのくらいか?というのも気になるポイントですよね。

多くの骨折は

  • 骨がくっついてきて可動域訓練ができるまでに4–6週間
  • さらに骨がくっついて体重をかける訓練ができるまでに6–8週間

という感じですが、 距骨骨折はここまで述べたとおり、血の巡りも悪く、治療が難しいので時間も余計にかかる傾向があります。

そのため、ギプス固定の場合は

  • 骨がくっついてきて可動域訓練ができるまでに5–7週間
  • さらに骨がくっついて体重をかける訓練ができるまでに7–9週間

手術して骨折部をスクリューなどで固定できた場合は、骨が固定できているので少し可動域訓練は早めにできますが、手術が必要なくらいの重症と考えると体重をかけるには時間がかかることもあり、

  • 骨折部が安定して可動域訓練ができるまでに3–5週間
  • さらに骨がくっついて体重をかける訓練ができるまでに7–10週間

というのがひとつの目安と考えています。

ただ、距骨骨折は骨が萎縮していってレントゲン上もくっつきが悪そうだったり、距骨壊死を疑うような状態になって、体重をかける時期をどんどん先延ばしにしながら経過を見ないといけないケースがあり、

完治まで数年かかるなんてことすらありますので注意が必要です。

まとめ

今回は距骨骨折をいかに後遺症を残さないかという視点でまとめてみました。少しでも参考になりましたら幸いです。

骨折というマイナス状態からゼロに戻すだけでなく、さらにプラスへ持っていく方法や考え方についてはメールマガジンで解説していますので、興味が持っていただけましたらご登録をお願いします。

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歌島 大輔

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